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それはズルガシコサでも、マリシアでもない。卑怯という。非紳士的行為、そのものだ。 [サッカーの基礎]

報復行為として注意、警告、退場処分を受ける。
わたくしはおもう。
では、その行為のもととなった相手選手にたいして、なにもない、というのはおかしいじゃないか。

エースがうけたのは、あきらかに、いやがらせであった。
エースとは、もちろん攻撃の要(かなめ)である。
そのかれを止める。
防御の必定である。

執拗に、執拗に、からだをあわせる。
エースは絡みつく相手を手ではらいのけた。
その瞬間、2枚目のイエローカード。
攻撃の要(かなめ)は退場する。
非紳士的行為。

挑発にのったのが悪いという。
が、それは嘘である。

挑発はもはや紳士的行為ではない。
問題はそこにやどる精神である。
挑発して得るメリットに何程の価値があろう。

それはズルガシコサでも、マリシアでもない。
卑怯という。
非紳士的行為、そのものだ。

密着すぎるマーク。
はたして、これはフェアープレーなのだろうか。

わたくしは、報復とともに、それを誘発したプレーにたいして、
いや、むしろ、
誘発プレーにこそ重きをなした注意勧告をすべきであると考える。





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まえむき [ことば]

わたくしは、
まえむき、
ということばがすきになれない。
まえむき、
とは、そも健康なひとたちがつかうことばでしかないと感じているからである。

健康なひとたち、というのはあなたでありわたくしである。
世の大半のかたがたのことである。
大けがや不慮(ふりょ)の事故、病、災難にあったことがないおおくのひとのことである。
ほとんどのひとのことである。

かれらはまえむきということばをよくつかう。
まえむきにかんがえよ、
まえむきにいこう、と。
大けがや不慮(ふりょ)の事故、病、災難にあったことがないおおくのひとは、まえむきといことばを、かんたんにくちにする。

大けがや不慮(ふりょ)の事故、病、災難にあったとき、ひとはどうしてよいのかわからない。
あわてふためく、か、泣く、か。
大けがや不慮(ふりょ)の事故、病、災難にあったとき、ひとはそうするよりほかない。
罵詈雑言を吐いて吐いて吐きつくし、怒り怒って怒りぬいて、のろわれた人生を悔いて悔いて悔いぬいて、そして泣いて泣いて泣きぬれて。
はじめて冷静になりうるのではあるまいか。
まえをむく、のはそれからだ。

健康なひとは傲慢で、そのことをしらない。
健康とはそういうことなのだ、とわたくしはおもっている。
それが健康であるいじょう、いたしかたない。
ひるがえって健康なひとができること。
それは、まえむきということばを発しないこと。
それだけでもましなのではなかろうか。

俵(歌人)万智さんが、おこさんとの素敵な会話をひとつ。
「先生ってさあ」と息子。
「よく、前を見なさい!って言うよね」。
まあ、あんたがよそ見ばっかりしてるからじゃない?
「でもさあ、オレにとっては、見ているほうが前なんだよね」
…ん?






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カム・トゥゲザー [音楽]

「これヘンな曲。」
遠藤くんはそういってわらった。
「こ、これさ、カ、カムトゥゲザっていうんだよ。」
遠藤くんは吃音であった。
ほんとうだ、シュッ、シュッって、かわってる。へんな曲。
「ビートルズのアビー・ロードっていうLPだよ。」
中学生のふたりはわらっていた。
遠藤くんの家の2階、遠藤くんの部屋である。

遠藤くんはご近所で、あししげくかよっていた。
話題はもっぱら音楽で、Tレックス、マーク・ボランも遠藤くんにおそわった。
遠藤くんは冴えていた。
いかしていたんだな。
4畳半くらいの部屋であったとおもう。
ベッドが据えてあったので、すこし窮屈であった。
けれど、当時、ベッドでねている子なんてぇのは少なかった。
2段ベッドをおねえさんとそれぞれの部屋で分っていた。
うらやましかった。
音響装置もパイオニアの4チャンネルステレオであった。

遠藤くんちは、独特の「におい」があって、おじゃまするたびにおなじにおいがした。
いままでにかいだことのない、どこか品がいい、香りとでもいおうか。
そんな家はほかになかった。
ただ、茶の間はくらかった。
となりやとちかいせいかもしれない。
ひるでもカーテンで窓はしめきられていた。

わたくしは、遠藤家がうらやましくてならなかった。





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